Youtoo25

その距離感になんだか焦る。

だって俺たちの間に距離なんてないはずだろ。

あんなことがあったからって俺たちは何も変わらない、よね?

それを確認するようににのに声をかける。

今日はダメなの?にのん家行っていい?

自分の声がなんだか上擦って聞こえる。

あれ。俺もしかして緊張してる?

今までにのを誘うのにそんなこと考えたことなかったのに、俺どうしちゃったんだろう。

そんな俺に、にのは顔も上げないで。

あー。今日は無理

え、なんで?

その言葉に断られるなんて思ってなかった俺はドキリとしたけど、

潤くんと飲みに行くから

即答されたそれに、そっか松潤と、って。

明確な理由があってなんだかホッとした。

別に俺と距離を置こうとかそんなんじゃないよね。

俺も行こうかな

ぼそっと呟いた俺に、にのが、は?って顔して俺を見る。

なに、どうしたの

だめ?

だめって言うか。まあ、いいや。でもそれは潤くんに聞いて。俺は誘ってもらった方だから勝手に決められないし

それだけ言うとまたゲームに向き合って、それ以上何も言わなかった。

集中してるのかな。少し尖らせた口にまた目が行って、慌てて首をふる。

ちょうどそこにガチャりとドアが開いて松潤が入ってきたから、大きな声で呼びかける。

ねえ、松潤。今日にのと飲みに行くんでしょ?俺も行っていい?

え、いいけど2人じゃないよ?俺の友達も一緒だけどいい?

うん、全然

松潤の友達ってことはにのも友達なんでしょ。

松潤が知らない人の中ににのを呼ぶわけないし、2人の共通の友達だろうって予想した。

そしたら俺も知らない人じゃないし。

普段はこういうのしないんだけど、今日はなんだか一緒にいたかったんだ。

じゃあ仕事終わりに

にっこり笑った松潤とは対照的に、相変わらずにのは表情が変わらない。

別に俺が来ようが来まいがどっちでもいいみたいな興味なさげな顔。

ついこの間まで俺のことが好きなんだって溢れてた顔なんかどこにも見えない。

その顔になんとなく胸がざわついたのはきっと気のせい、だよね。

あれ、にのと相葉くんじゃん

松潤に連れられて向かった先には、予想通り俺にも馴染みのある顔が多数。

初めましての人もいたけど、そこはお互い職業柄、画面越しには見たことある人たちばかりで初めて会った気はしなかった。

なに、俺が来ること言ってなかったの?

にのが松潤にそう聞くと、サプライズだからって。

にのが来るなんて珍しいからさ。みんな驚くかなと思って

その声に合わせるように周りから、そうだよ、にの久しぶりって、こっちこっちと誘われるまま奥の席へと消えていくにの。

相葉くんも座ろう

松潤に言われて俺と松潤は手前の席へ。

相葉くんも来てくれて嬉しいなあなんて暖かく迎えてくれる言葉に、ちょっとホッとして。

とりあえず全員で乾杯したらあとはそれぞれ手近な人達と雑談へ。

離れた場所に座るにのの様子をちらちら見ながらも同じ時間を過ごしてることに安心する。

って何を俺はこんなに不安に思ってるの。

にのの様子はいつもと同じじゃん。

あんまり酒に強くないにのは、いつものようにちびりちびりと舐めるように飲みながら、それでも少し酔いが回ってきてるのか目尻を赤く染めて楽しそうに笑ってる。

それを横目に見ながら俺も酒を飲み進めてしばらくした頃に耳に飛び込んで来た声にドキリとした。

にの、今付き合ってる人いないの?

そのワードになんだかそわそわしてしまって、にのの返答が気になって俺の意識はそっちに集中。

いない

素っ気なく答えたにのの言葉に、まあ、そうだよねって。

この間まで俺がそのポジションにいたけど、今は違う。俺たちの1月は終わってる。

だけどその言葉に、ほんとに終わったんだなってどこか寂しいような気持ちになるのはなんでだろ。

俺、変なの。ぐいっとグラスを空けて次は何を飲もうかとメニューに手を伸ばす俺に、続けて聞こえてくる言葉に一瞬ピクリと手が止まる。

じゃあさ、好きなやつはいな、

いない

相手の言葉に被せるように答えたそれに、え、ちょっと待ってって。

好きな人もいない、の?

無意識に手にしたメニューを眺めるフリして思考がぐるぐる。

いや、そうだよね。にのは詮索されるの好きじゃないし。

下手に答えて探られても困るし、そう言うのが無難な答え。うん。そうだよ。

だって、にの、まだ俺のこと好き、だよね。

だってついこの間あんなキスしたばかりだもん。

もう吹っ切ったとか、忘れたとか、そんな簡単なもんじゃないだろ?